多汗症

多汗症

多汗症とは

多汗症とは、汗の量が異常に増加して日常生活に支障が出る疾患で全身性多汗症と局所性多汗症に分けられます。

全身性多汗症

全身の汗が増加します。特段原因のない特発性もありますが、原因に甲状腺機能亢進症や糖尿病、低血糖などの疾患を有する場合や薬剤性、妊娠、肥満などによっても多汗になります。

局所性多汗症

わきや手のひら、足の裏など体の一部に限局して汗が増加して日常生活に支障をきたします。
幼少期から思春期頃に発症することが多く、手足の多汗症はいつも湿っており、したたり落ちる程の発汗がみられることもあります。
また、わきの多汗症は多量の発汗でシャツにしみができることがあります。
いずれも精神的ストレスがかかると特に汗の量が多くなります。

多汗症の重症度

重症度の判定には主に「HDSSスコア」(Hyperhidrosis disease severity scale)を用いています。自覚症状がどれくらい日常生活に影響をあたえているかを中心としたテストです。

発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある

多汗症と腋臭症(わきが)の違い

多汗症はエクリン汗腺が機能亢進を起こしている状態で、腋臭症はアポクリン汗腺がよく発達している状態と言えます。

多汗症

汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があり、それぞれの分布、汗の性質が異なります。
エクリン腺は全身に分布しており、主に体温調節のために汗を出す汗腺です。
エクリン腺の汗の成分は99%水分で1%は塩分です。サラサラ、透明です。
アポクリン腺は体の限られた部分(耳、わきの下、乳輪、陰部など)に分布しておりタンパク質や脂質を含みます。乳白色で濁っています。
アポクリン腺の汗のタンパク質や脂質を常在菌が分解・酸化して臭いが発生します。

多汗症の治療

薬剤(保険適応)
エクロックゲル5%
エクロックゲル

2019年末にエクロックゲルが新薬として登場しました。
日本初の保険適用の原発性腋窩多汗症外用剤です。
1日1回、両脇への塗布で効果が期待できます。
注意事項としては緑内障や前立腺肥大の方には使用できません。
副作用(抗コリン作用)により眼圧が上昇したり、尿閉を誘発することがあります。
容器も工夫されておりアプリケーターを使って薬液に手を触れずに塗ることができます。
新薬の為、発売から1年間(2021年11月まで)1本(約2週間分)ずつしか処方はできませんが3割負担の方であれば14日分で1,462円になります(診察代別)。
エクロックゲルは抗コリン剤ですので、作用機序は神経終末からの神経伝達物質であるアセチルコチンが受容体に結合して作用するところを阻害するので、ボツリヌストキシン注射での神経終末におけるアセチルコリン放出抑制と似たような機序になります。
詳しくは製造販売元(科研製薬)の運営するワキ汗治療ナビというサイトがあります。下のバナーご参照ください。

ワキ汗の情報・サポートサイト ワキ汗治療ナビ
ラピフォートワイプ
ラピフォートワイプ

ラピフォートワイプ2.5%は、ワイプ型の塗り薬で原発性腋窩多汗症の発汗を抑制します。
主成分である「ラピドライン」は、発汗を抑制する働きがあります。汗腺の活動を調整し、過剰な汗の分泌を抑えることで、多汗症の症状を効果的に軽減します。1回使いきりのワイプ製剤で、簡便かつ衛生的に使用することができます。

アポハイドローション
アポハイドローション

日本初の保険適用された手の多汗症(原発性手掌多汗症)治療用の外用薬です。
手のひらの皮膚から吸収されて、皮膚の下にある交感神経から出される発汗を促す物質(アセチルコリン)をブロックすることにより、発汗抑制効果が期待できる薬です。

内服薬(保険適応)
プロ・バンサイン錠
プロ・バンサイン錠

抗コリン剤の飲み薬です。
アセチルコリンという神経伝達物質を抑制する抗コリン剤(プロ・バンサイン)を服用することで汗を抑えることが可能です。
主な副作用として口が渇く、便秘、頭痛等が挙げられます。
料金は保険適応で3割負担の方であれば28日分で1,000円程度です(診察代別)。

漢方薬(保険適応)

漢方薬で効果が出る場合もあります。
代表的な漢方薬に防已黄耆湯があります。

制汗剤

当院では現在3種類の制汗剤を採用しております。

Dシリーズ

D-bar 15g/1,650円 D-tube 40g/1,980円 D-powder 30g/2,200円(税込)

Dシリーズ

医療機関を対象とした化粧品・医薬部外品の企画・開発・販売を行う株式会社ケイセイが提供する制汗剤です。
Dシリーズにはスティックタイプのディーバーの他に、チューブタイプやパウダータイプがあります。
2つの有効成分、乾燥硫酸アルミニウムカリウム(焼ミョウバン)とイソプロピルメチルフェノールで制汗作用、アルカリ性の汗に対する消臭効果、臭いの原因菌の殺菌効果があります。
気になる部分に朝塗るだけで夜まで効果が持続し、塗りなおしの手間が要りません。

QUADAYS(キュアデイズ)

薬用デオドラントジェル40g 2,750円(税込)

キュアデイズ

ミネラルファンデーションで有名なスキンキュアラボの製品です。
2つの有効成分クロルヒドロキシアルミニウムとイソプロピルメチルフェノールで汗腺に蓋をして汗を抑制し、長時間続く殺菌力でにおいを防ぎます。
肌にやさしい成分なので子供から大人までお使いいただけます。
わきだけでなく、手足やデリケートゾーンなどどこでも使えます。

パースピレックス

わき用 20ml 4,950円 手足用ローション 100ml 5,500円(税込)

パースピレックス

デンマーク Riemann社製、効果が長く持続する制汗剤です。
主成分である塩化アルミニウムが汗やニオイの原因となる汗腺にダイレクトに作用して、汗腺内に角栓を形成。
従来の制汗剤はシャワーや入浴などで流れるたびに塗り直す必要がありましたが、パースピレックスは3~5日間効果が持続します。
効果が表れるまでの約1週間は毎晩塗布してください。

ボツリヌストキシン注射

ボツリヌストキシン注射

両わき(100単位)40,000円

表情筋を弛緩させ、しわの治療に用いることは有名です。
汗腺においてもコリン作動性神経終末と汗腺の接合部においてアセチルコリンの放出を阻害するので、汗の量が抑えられ重度の原発性腋窩多汗症に使われています。

わきが(腋臭症)手術

当院では、わきが(腋臭症)に対して2種類の手術治療を行っています。

1つは現在の標準的な手術であり、保険の治療としておこなわれている剪除法(皮弁法)です。
わきのしわに沿って4~5cm程度の皮膚切開を行い、指で皮膚を裏返し、目で見ながら皮膚の裏に存在する汗腺(アポクリン腺)をハサミで確実に切除する方法です。
もう一つは、わきの下に1~2ヶ所5㎜の小切開で、筒状のマイクロシェーバー(カールストルツ社製マイクロデブリッター装置)を使用し、アポクリン腺を除去する方法です。
これにより従来の手術(剪除法)でできる長いキズ痕(4~5㎝)を残すことなく、最小限のキズ跡で大部分の汗腺(アポクリン汗腺)を除去することが可能になりました。
腕を上げても傷跡が小さく目立たないため、他人に手術したことを気づかれることがありません。
剪除法と同等の効果があり、小さい切開なので身体に優しいのが特長です。

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