私達が呼吸をする時、空気は鼻や口から入り、肺に達します。この空気の通り道を気道といいます。気道は大きく上気道と下気道に分けられ、鼻・咽頭・喉頭は上気道、気管・気管支・肺を下気道といいます。
入ってきた空気はまず鼻やのどに当たりますから、空気中の病原菌は鼻や上咽喉(鼻の奥で、のどの一番奥)、扁桃腺などにつきます。カゼ(かぜ症候群)とは、急性の上気道(下気道の一部を含む)の炎症の総称で、具体的には、急性の鼻炎、扁桃腺炎、咽頭炎、喉頭炎、気管・気管支炎などをいいます。炎症の程度、広がりによって上記の疾患のいくつかが組み合わされて症状が出現することになります。
カゼの症状は、局所的には鼻みず、くしゃみ、鼻閉、のどの痛み、せき、たん、声のかれなどが出現します。全身的には、発熱、倦怠感、関節痛、頭痛、さらには下痢、腹痛などの消化器症状を伴うこともあります。
カゼという言葉は、一般にはかなりあいまいに用いられますが、鼻カゼをひきやすいと思っている人の中には、アレルギー性鼻炎の方がおられ、カゼとは無関係にくしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどを繰り返す場合があります。
また、せきやたん、息苦しさを訴える人の中には喘息の傾向のある人や喫煙によるのどの慢性炎症を持っている人もいます。一度、耳鼻咽喉科の専門医で診療を受ける必要があります。
カゼの原因の90%前後は、アデノウイルス、ライノウイルス、インフルエンザなど各種のウイルス感染といわれていますが、これが引き金となり、弱った粘膜に二次的に細菌感染が加わって、さらに悪化したり、長引いたりすることになります。ウイルスの中でもインフルエンザウイルスによるものは、症状が高度で感染力が強く、しばしば学級閉鎖などの原因となります。
カゼは放置しても自然に治癒する場合もありますが、こじらせると鼻からさらに副鼻腔に炎症が波及し、鼻みずが膿性になったり、頬や眼の周囲などに痛みがくることがあります(急性副鼻腔炎)。
また、鼻やのどの炎症が耳管という上咽頭と中耳をつなぐ管に波及して、耳がつまった感じや自分の声が耳に響くなどの症状を起こします(耳管炎・滲出性中耳炎)。これが中耳にまで波及すると、中耳腔に分泌液が貯留し、耳痛や難聴が強くなります(急性中耳炎)。
炎症が下方へ進展すると、呼吸器の炎症(気管支炎、肺炎)が生じ、せきやたんが激しくなり、高熱が続いたりします。
カゼにかかった時、一般に内科とか小児科を受診される方が多いようですが、はなの症状やのどの痛みなど上気道の炎症が主体をなしている場合は耳鼻咽喉科医がカゼの専門医といえます。
耳鼻咽喉科の利点は、病気の程度と広がりを直接目で確認できます。