口の中を見ると真ん中に口蓋垂(のどちんこ)があり、その両脇に口蓋扁桃はあります、表面に沢山の陰窩(くぼみ)があり、アーモンド(扁桃)に似ていることからその名があります。その他、扁桃には舌根扁桃、咽頭側索(アデノイド)、耳管扁桃があり、鼻、口から入ってくる外敵(細菌、ウイルス)から身を守る関所の役目をしているといわれています。しかしその役目も子供のうちに終了してしまいます。
扁桃炎には急性扁桃炎と慢性扁桃炎の二つがあります。
急性扁桃炎とは感冒をきっかけに扁桃の炎症をきたし、38~40℃の発熱、喉の痛み、首の腫れ(リンパ節膨張)が出現します。ひどいときには食事もしづらくなります。治療は抗生物質を使用しますが、それでも5~6日ほどかかります。さらに炎症がひどくなると扁桃のまわりに膿がたまることがあります。これを扁桃周囲膿瘍といいます。この場合には内服の抗生物質だけではなかなか完治せず、抗生物質の点滴をしたり、切開して膿を出すことが必要なこともあります。
もうひとつは慢性扁桃炎といい、急性扁桃炎を何度も繰り返すものを言います。本来外敵から身を守る関所の扁桃が常に少しの炎症が続いており、ちょっとでも体調を崩すとすぐにひどい炎症を起こすのです。
学校健診などで、扁桃炎は起こさないのに扁桃が大きいと指摘されることがあります。基本的に3~4才の頃、扁桃は一番大きく、7~8才頃より急速に小さくなりますが、時々大きいままのときがあります。単に大きいだけでは病気ではありません。
一年間に3~4回以上の発熱をきたす慢性扁桃炎(習慣性扁桃炎といいます)が最も多いようです。発熱をきたす度抗生物質を使えばいつかは扁桃炎を起こさなくなりますが、それまでの長年にわたる日常生活にかなりの支障をきたします。これに対し扁桃摘出することにより、発熱、喉の痛みがほとんどなくなったり、学校、仕事を休まずにすむ、など良い結果を得られることがほとんどです。
扁桃肥大によりひどいいびきや睡眠中呼吸が一時的に停止したり、食が細かったりすると、居眠りにより学業、仕事に支障をきたすだけでなく、体力が続きません。これも扁桃摘出により、熟睡できるようになり勉強、仕事に集中できるようになったとか、食欲が増えたなど良い結果が期待できます。
扁桃炎を繰り返すことにより腎炎(糸球体腎炎・lgA腎症)、掌蹠嚢胞症、心臓病(弁膜症)などの合併することを扁桃病巣感染症といいます。特に掌蹠嚢胞症の場合、扁桃摘出術の効果が高いといわれています。