わきがは医学的には腋臭症と呼ばれます。
日本人は世界的に見て体臭の少ない人種で、体臭の強い人はコンプレックスをもってしまうことが多いようです。
わきが(腋臭症)の原因
汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があり、それぞれの分布、汗の性質が異なります。
エクリン腺は全身に分布しており、主に体温調節のために汗を出す汗腺です。
エクリン腺の汗の成分は99%水分で1%は塩分です。サラサラ、透明です。
アポクリン腺は体の限られた部分(耳、わきの下、乳輪、陰部など)に分布しておりタンパク質や脂質を含みます。乳白色で濁っています。
エクリン腺 | アポクリン腺 | |
---|---|---|
部位 | 全身の皮膚表面に直接開口 | 耳、わきの下、乳輪、陰部などの毛穴に開口 |
ニオイ | なし | ほとんどなし |
色 | 無色 | 乳白色 |
いずれの汗も無臭ですが、アポクリン腺の汗のタンパク質や脂質を常在菌が分解・酸化して臭いが発生します。
アポクリン汗腺の量が多かったり、大きかったり、働きが活発だったりするとわきが(腋臭症)になります。
アポクリン腺は耳にも分布していますので、耳垢が湿っているタイプの方は、わきが(腋臭症)が多いです。
わきが(腋臭症)の診断
1 | 耳垢が湿っている。 |
---|---|
2 | 両親のどちらかがわきが(腋臭症)である。 |
3 | 洋服や下着のわきの部分が黄ばむ。 |
4 | 家族など親しい人からにおいを指摘されたことがある。 |
このうち2項目を満たせばわきが(腋臭症)の可能性が高いといえます。
わきが(腋臭症)の重症度テスト
ガーゼテスト
わきが(腋臭症)の重症度を評価する方法としてガーゼテストがあります。ガーゼをわきの下にはさみ、数分間汗ばむ運動をした後に、ガーゼの臭いを客観的に判定するという検査です。
レベル1 | におわない |
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レベル2 | ごくわずか |
レベル3 | 鼻を近づけるとわかる(軽度) |
レベル4 | 鼻を近づけなくてもわかる(中等度) |
レベル5 | 手に持っただけでわかる(重度) |
自己臭症(自己臭恐怖症)とは
実際にはにおいを発していないにもかかわらず、「自分は周囲からくさいと思われている」「嫌な体臭や口臭がする」と思い込んでしまう自己臭症(自己臭恐怖症)の方もいらっしゃいます。
自己臭症(自己臭恐怖症)による思い込みは手術では治りませんので、手術をを希望される方の中から除外する必要があります。前述の4項目の症状やガーゼテストなどで手術適応を判断します。
当院のわきが(腋臭症)の治療(制汗剤・薬剤)
軽度であれば汗の量を抑える制汗剤、薬剤、ボトックスで対応します。
中等度以上であれば、ボトックスまたは手術を考慮します。
制汗剤
当院では現在3種類の制汗剤を採用しております。
Dシリーズ
朝ぬるだけで、夜まで塗り直しなし。
QUADAYS(キュアデイズ)
すべての人にニオイで悩まない毎日を。
パースピレックス
汗とニオイを抑える医療用制汗剤。
薬剤(保険適応)
エクロックゲル5%
日本初保険適応の多汗症用外用薬
ボツリヌストキシン注射
ワキ・多汗症の改善に。 両わき(100単位) 40,000円
表情筋を弛緩させ、しわの治療に用いることは有名です。
汗腺においてもコリン作動性神経終末と汗腺の接合部においてアセチルコリンの放出を阻害するので、汗の量が抑えられ重度の原発性腋窩多汗症に使われています。
わきが(腋臭症)手術
当院では、わきが(腋臭症)に対して2種類の手術治療を行っています。
1つは現在の標準的な手術であり、保険の治療としておこなわれている剪除法(皮弁法)です。
わきのしわに沿って4~5cm程度の皮膚切開を行い、指で皮膚を裏返し、目で見ながら皮膚の裏に存在する汗腺(アポクリン腺)をハサミで確実に切除する方法です。
もう一つは、わきの下に1~2ヶ所5㎜の小切開で、筒状のマイクロシェーバー(カールストルツ社製マイクロデブリッター装置)を使用し、アポクリン腺を除去する方法です。
これにより従来の手術(剪除法)でできる長いキズ痕(4~5㎝)を残すことなく、最小限のキズ跡で大部分の汗腺(アポクリン汗腺)を除去することが可能になりました。
腕を上げても傷跡が小さく目立たないため、他人に手術したことを気づかれることがありません。
剪除法と同等の効果があり、小さい切開なので身体に優しいのが特長です。
剪除法(皮弁法) 保険適応
剪除法手術の流れ
マイクロシェーバー法
マイクロシェーバー法の仕組み
アポクリン汗腺を切除しながら吸引除去するマイクロシェーバーとは、掃除機の先に電気かみそりが付いているような機器です。
わきの皮膚のダメージを抑えながら、その直下のアポクリン汗腺のみを大部分削り取ることができる非常に優れた方法です。
マイクロシェーバーは非常に細く、長さがあるため小さな傷(5㎜)からわき全体の手術を行うことができます。
デブリッダー先端は外筒・内筒の二重構造になっており、内筒部分だけが回転して汗腺組織を削り取ります。
汗腺を削り取りやすいように内筒の先端部分にはギザギザの特殊加工が施されており、この内筒の回転方向が一方通行でなく交互に往復運動をすることで、削り取りの際の組織の巻き込みを防ぎ、皮膚を保護しながら汗腺を効率よく除去できます。
マイクロシェーバー法の手術の流れ
手術前の注意点
手術前にわき毛を剃って来院してください。
手術時間は両側で約60~90分です。
当日は前開きの余裕のある服装で来院してください。(Tシャツなどは不可)
手術後の注意点
術後の通院(キズのチェック・ドレーン抜去・抜糸)
手術翌日に血腫(血液が溜まること)がないことを確認する必要があります。
手術後3日目を目安にタイオーバーを外し、ドレーン(血液を排出する細いストロー)を抜きます。
手術後7日目を目安に抜糸を行います。
シャワー・入浴
手術当日からシャワー可能ですが、術後3日間は患部を濡らさないようにしてください。4日目からは患部も洗えます。
術後1週間以降から入浴も可能です。
仕事・運動
デスクワークであれば手術翌日から可能です。
体を使う仕事や軽い運動は1週間控えてください。
激しい上半身の運動は2週間控えてください。
飲酒
3日間は控えてください。
手術のリスク
術後血腫
わきの手術の最大のリスクに術後血腫があります。
従来の手術(剪除法)と比べ少ないですが、まれに起こります。
血液や浸出液が溜まらないようドレーン(細いストロー)を留置しますが、抜けきれないほどの出血があると血液が溜まり血腫となります。
出血原因のほとんどが当日の安静不足です。
そのため、手術当日から翌日にかけては安静を保つことが重要です。
万が一術後血腫が生じた場合は、再度麻酔後2~3㎝の切開し血腫除去を行うことがあります。
感染
術後創部感染予防に抗生剤を内服します。
黒色の点(小さな粉瘤)
数ヶ月後から起こる可能性があります。できた場合は小さいうちに焼灼や切除を行います。
テープかぶれ
発生しないよう気を付けていますが、テープでの圧迫固定を念入りに行うため発生率は高いです。発生した場合は軟膏をお渡しします。
手術後のキズの経過
しこり(硬結)・引きつれ(拘縮)
汗腺をしっかり切除すればするほど皮膚にダメージが加わり、しこりや引きつれを起こしやすくなります。
そのため汗腺の切除度合いと皮膚のダメージバランスを考慮し手術を行います。
通常3ヶ月以降に徐々にやわらかくなっていきます。
半年~1年たつとほとんどなくなります。
黒ずみ(色素沈着)
汗腺をしっかり切除すればするほど皮膚にダメージが加わり、黒ずみを起こしやすくなります。
そのため汗腺の切除度合いと皮膚のダメージバランスを考慮し手術を行います。
色黒の方、日焼けしやすい肌質の方は残りやすくなります。
ヘパリン類似物質クリーム、ハイドロキノン製剤、トレチノインの外用をおすすめすることがあります。
キズ跡の感覚の異常
皮膚を剥がし薄くしていますので感覚が鈍くなりますが、数ヶ月かけて回復してきます。まれに腕のしびれや痛みを感じる方もいますが、これも通常数週間で回復します。
手術料金
※下記の金額は全て税込価格となります。
わきが手術 | 自費診療 | |
---|---|---|
剪除法(保険適応 3割負担) | 片側 | 20,610円 |
両側 | 41,220円 | |
マイクロシェーバー法 | 片側 | 165,000円 |
両側 | 275,000円 |